アリが死んだ日
台湾料理に飽きた頃 月の汚い晩だった。
アリが死んだ。理由も告げずにくだばった。
せめて台湾料理に舌鼓を打ってた頃に死んでくれれりゃ
救われようがあるってものを。
アリの葬列が西のかなたまで続いていく。
あんなに働き者の、かわいそうなヤツから生きることを取り上げたら
いったい何が残るのか、ブランデ一飲み考えてみても。
アリの葬列にみんなが花を手向ける。
ごろつきヤクザまがいの輩まであんまりかなしいもんだから
棺にしょんべんひっかける。
アリが死んだ。
こんな夜ってないだろう。
せめて台湾料理に舌鼓を打ってた頃に死んでくれれりゃ
救われようがあるってものを。
葬列が消え、みんながアリを忘れるだろう。
世界は何食わぬ顔でまた東から始まって
いつだってそれは終わりへ向かって、いつかはみんな死ぬだろう。
アリが死んだ。
ただそれだけのことなんだ。